2012/07/13

mAAN Studies 第3回研究会案内



※上記リンクをクリックすると、ビラのダウンロード画面となります

日時:2012721() 15:00-17:00

※ 当日扉が閉まっている場合は、左下アドレスまでメール送信してください。

場所:稲盛財団記念館2階 セミナー室(地図はこちら)

発表者:松本 康隆(南京工業大学)

発表内容:
 近年まで伝統的なハイカルチャーに関する研究は、分厚い蓄積が存在する一方で、相対的には一国内で研究が閉じがちであった。本発表では、茶文化に関わる空間に注目し、日本と中国におけるその影響関係の一端を議論したい。具体的には、以下の事例に着目する。

 日本の茶文化空間には「抹茶室」と「煎茶室」がある。前者を支える文化である抹茶道の背景には宋の茶文化が、後者を支える文化である煎茶道の背景には明の茶文化が強い影響を与えている 。一方、中国の茶文化に関わりの深い空間を探すと、「園林」(日本の「庭園」概念に近い)が最も近い。長い時間の中で培われたそれらの文化空間の相互関係や、近代以後の人的ないし、技術的な影響関係を対象にして、大きな茶文化空間の配置図を作成してみたい。

 建築は変化し続ける文化を受け入れる器であると同時に、文化を現実世界の中に固定化する役割も持つ。「ハイカルチャー」の垣根を国境と同一のものと自明視しないような枠組みを、具体的な建築事例の連続性や影響関係の中で考察することで、東アジアの建築遺産のあり方に対する一助とできれば幸いである。

2012/06/06

2012年6月30日(土)第2回研究会案内「十九世紀東アジアにおけるジャーディン・マセソン商会の商館建築の研究」

日時:2012年6月30日(土) 15:00-17:00
場所:稲盛財団記念館3階 小会議室Ⅰ【地図はこちら
発表タイトル:十九世紀東アジアにおけるジャーディン・マセソン商会の商館建築の研究  
発表者:水田 丞 (広島大学大学院工学研究科建築学専攻)

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発表内容:

本研究は、ジャーディン・マセソン商会(Jardine, Matheson & Co. 中国語で怡和洋行)の商館建築の造営・管理運営について研究するものである。
十九世紀東アジア最大のJM商会は、1832年に中国の広州において2人のスコットランド人、W.ジャーディン(William Jardine,1784-1843)とJ.マセソン(Robert Matheson,1796-1878)によって設立された。1844年にはその拠点をイギリスの植民地になって間もない香港に置き、上海、福州をはじめとする中国沿岸の開港場、そして日本の横浜や長崎といった開港都市に次々に支店を開設し、職員や代理人を使って現地の商人との貿易、またプラント輸出などの対政府取引にも関与している。さらに、JM商会はこれらの商活動ばかりでなく、現地人や在留外国人をテナントにした宅地建物の管理・賃貸にも従事していた。
JM商会の東アジア近代史における重要性は早くから注目され、特に経済史の分野から優れた研究が生み出されてきた。一方、本研究は建築史学的な視点に立って、例えば、彼らの活動の拠点となる商館建築の造営にあたり施主である商人たちは何を意図していたのか、また、建築家の雇用、アジアの気候や職人、材料や工法などにどのように対処したかといった問題を考察したい。もちろん、商活動と直結した商館建築の建築には、経済的な損得が最も要求されたであろうが、しかし、商人たちの建築活動にはシンボルとなる自らの館を構えることへの憧れ、現地の文化の衝突と受容、さらに、香港本店や支店間相互における材料や設計プラン、建築家の影響や流通といった、国境や地域の枠を超えた連環的な物語もあったものと期待される。
以上の問題点を念頭におきつつ、まず、当時のディレクトリー(外国人名鑑)を資料に用い、東アジア(香港、中国、台湾、日本)の開港都市におけるJM商会の支店の開設状況について、1850年代から1920年代までを目途にリスト化し、その全貌と推移を把握する。次に、JM商会文書や英字新聞といった同時代資料、JM商会の社史や刊行物から丹念に史料を収集し、JM商会香港本店、上海店、横浜店といった主要店における店舗の造営状況を復元的に考察する。特に復元考察の過程で、商館建築の意匠、材料、建築家や大工との駆け引きといった論点を抽出し、連環と境界、衝突と受容の観点から考察する。そして復元考察によって得た知見をもとに、例えば、商品の検査や保管場所の位置、事務部門と住居機能の配置関係など、JM商会の商活動と商館建築の平面や構造形式との関係を把握、またその時代的な推移も読み取ることを試みてみたい。

目次

はじめに
1.東アジアにおけるJM商会の商館建築の開設状況
2.主要店舗の造営状況(香港本店、上海店、横浜店他・・・)
3.商活動と商館建築、その変遷 まとめと考察

2012/01/12

2012年2月10日(金) 第1回 研究会案内 「日常生活から都市、地域、海域のネットワークと動態を考える」


日時:2012210日(金) 18時より
東京大学生産技術研究所A棟中セミナー室4(As311・312)

発表タイトル:日常生活から都市、地域、海域のネットワークと動態を考える-インド洋のハブ都市コロンボを中心として

発表者:山田協太(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)


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発表内容:
 
かつて植民都市であり、今日はスリランカの経済中心都市であるコロンボを軸として、インド洋にポルトガル、オランダの展開した1617世紀から、イギリスによる各地の植民地化、その独立を経て現在に至るまでの都市と地域、海域の動態を考察する。
 植民都市は現代の都市と都市システムの起源として着目されてきた。植民都市のあり方を巡っては、ヨーロッパの地域社会へもたらした断絶、支配が語られてきた。ところがこうした議論において、都市で生活する非ヨーロッパの人々の活動に必ずしも十分に注意が向けられてきたとは言えない。また、都市は地域をまとめる中核、地域発展の駆動力として注目されてきた。しかし都市と地域との関係についてもまた、具体的な場所と時期について十分に考察されてきたとは言えない。
 本論ではこうした議論の成立した背景に立ち戻るとともに、在地の人々の展開してきた活動を主題として、都市を焦点としつつ都市を越える様々なスケールの空間を視野に入れて以下の2点をあらためて捉えなおしたい。
① 南アジアあるいはインド洋において都市と地域、海域はどのような関係で結ばれてきたのか。
② 植民地期から現在までそのハブ都市コロンボはどのように変容してきたのか。



   


 連絡先:谷川竜一 (ryu-ichi(アットマーク)db3.so-net.ne.jp)